(一社)建築防水安全品質協議会は、2014 年3 月に「特定化学物質障害予防規則に対応したウレタン塗膜防水工事指針」を刊行しました。この指針は、主剤にトリレンジイソシアネート(TDI)、硬化剤に3,3’- ジクロロ-4-4’- ジアミノジフェニルメタン(MBOCA)を重量の1%を超えて含有するウレタン塗膜防水材を対象として、特定化学物質障害予防規則を遵守したウレタン塗膜防水工事を具体的に進めるために整備されました。
厚生労働省は化学物質による労働災害を防止するため、2022 年から労働安全衛生関係法令の改正を行っています。改正の目的は、化学物質による労働災害を防止するため、従来の特別規則(特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則)による規制の対象外であった有害な化学物質を主な対象として、国によるばく露の上限となる基準の策定、危険性・有害性情報の伝達の整備拡充等を前提として、事業者が、リスクアセスメントの結果に基づき、ばく露防止のための措置を適切に実施する制度を導入することにあります。
したがって、化学物質を取扱うウレタン塗膜防水工事業者は、① GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)分類による表示ラベルやSDS(製品安全データシート)により伝達される危険性・有害性情報を理解し、②化学物質を取扱う塗膜防水工事における施工方法、施工環境等を勘案し、③適切な方法でリスクアセスメントを実施し、④リスクアセスメント結果に基づき化学物質のリスク低減措置を決定し、⑤リスクアセスメント結果およびリスク低減措置を労働者に周知する必要があります。
このような要求に対応するため、(一社)建築防水安全品質協議会、建築防水環境安全委員会ではリスク管理マニュアル作成委員会を設置し、「手塗り工法によるウレタン塗膜防水工事における化学物質のリスク管理マニュアル」を作成しました。
ウレタン塗膜防水工事では種々の化学物質を含む防水材料(プライマー、防水材、仕上塗料)が使用されます。リスク管理マニュアル作成委員会では、代表的なウレタン防水材料を選択し、実際の作業環境下において化学物質のばく露濃度を測定することにより、リスクアセスメントを実施しました。そして、リスクアセスメントの結果に基づいてリスク低減措置を定め、使用材料、作業環境、作業内容等を踏まえたリスク管理マニュアルを作成しました。
化学物質の⾃律的な管理に向けて化学物質の濃度を基準値以下とする措置が2024 年4月に施行されました。作成したリスク管理マニュアルがウレタン塗膜防水工事現場における健康障害防⽌対策に役⽴つことを期待します。
(本誌 まえがき より)
◆同書の目次
まえがき
名簿
第1章 新しい化学物質規制
1.1 新しい化学物質規制の概要
1.2 ラベル表示と安全データシート
1.3 リスクアセスメント
第2章 CREATE-SIMPLE によるリスクアセスメント
2.1 CREATE-SIMPLE の概要
2.2 CREATE-SIMPLE 利用方法の概略
2.3 CREATE-SIMPLE の理論の概略
2.4 リスクの判定
2.5 リスク低減措置の内容検討支援
2.6 CREATE-SIMPLE によるウレタン塗膜防水工事の
リスクアセスメント例
2.7 CREATE-SIMPLE によるウレタン塗膜防水工事の
リスクアセスメントのまとめ
第3章 手塗り工法によるウレタン塗膜防水工事での
個人ばく露濃度測定によるリスクアセスメント
3.1 個人ばく露濃度測定によるリスクアセスメント
3.2 屋内作業におけるウレタン塗膜防水工事の
有機溶剤の個人ばく露濃度
3.3 屋外作業におけるウレタン塗膜防水工事の
有機溶剤の個人ばく露濃度
3.4 下地調整塗材から発生する結晶質シリカの
個人ばくろ濃度
3.5 ウレタン塗膜防水工事での個人ばくろ濃度
実測結果に基づくリスク管理の考え方
第4章 皮膚障害等防止用保護具
4.1 皮膚等障害の発生状況
4.2 皮膚障害等防止用保護具の種類
4.3 手塗り工法によるウレタン塗膜防水工事における
皮膚障害等防止用保護具選定の考え方
第5章 手塗り工法によるウレタン塗膜防水工法における
リスク管理マニュアルの開発
5.1 リスク管理マニュアル開発の概要
5.2 材料、施工環境、作業工程の定義
5.3 使用する保護具の選定
5.4 リスク管理マニュアルの作成手順
5.5 材料毎のリスク管理マニュアルの作成例
第6章 リスクアセスメント実施体制
6.1 防水工事業におけるリスクアセスメント実施体制
6.2 作業者への周知
6.3 化学物質管理者と保護具着用管理責任者の選任
6.4 保護具着用管理責任者の職務
6.5 作業記録の保存
付録
付録1 個人サンプリング法による環境測定
付録2 安全データシート(SDS)の例
付録3 手塗り工法によるウレタン塗膜防水工事における
リスク管理マニュアル
付録4 日本建築学会大会での研究発表梗概研究報告
編 集:一般社団法人建築防水安全品質協議会
建築防水環境安全委員会
リスク管理マニュアル作成委員会
版 型:A4版・カラー
頁 数:236頁
発行日:2025年7月
ISBN:978-4-903476-89-6
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